浄土をおもう

お話

今月は春のお彼岸ひがんがあります。

お彼岸というのは、人生の故郷を改めてお浄土と示されたことを再確認するご縁です。 

話は変わりますが、皆さまサグラダファミリアをご存知でしょうか。

スペインのバルセロナにある建造物で、1882年から工事が始まり今もなお工事が続いている世界遺産です。

またサグラダファミリアは建築家アントニ・ガウディの代表作でもあります。

長きに渡って“未完の聖堂”と呼ばれてきたサグラダファミリアですが、ガウディの死から100年経った2026年に完成が予定されています。

なぜこれほどまでに時間がかかったのでしょうか。

サグラダファミリアの全貌は設計したガウディの頭の中にしかなかったと言われ、頼りにできるのはたった一枚のスケッチだったそうです。

そしてガウディが亡くなり、弟子たちが作った数々の資料もスペイン内戦で消失してしまい、常に手探り状態で建設を進めていくしかありませんでした。

そういう状態なので思うように建設は進まず、新しい部分を作るのと同時に、完成していた部分の補修も行わなければならなかったので、完成するには300年以上かかるとも言われていました。

それが建築技術や3Dプリンターなどの技術の発展もあって約150年で完成することが発表されました。

150年も早く完成するとはいえ、それでも途方もない年月がかかっているわけで、建築に関わっていた人は何世代にも渡って作られてきたものであります。

その方々の思いを想像してみますと、「私の代じゃなくても、同じこころざしの人がいつかこれを立派に完成してくれる」という信念をもち、後世に残すところに本当の人間の生きる意味があるんじゃないかなと思います。

そんな理想もなく一部の人が言うように「死んだらおしまい」という考えでは、このような大きなことは成し遂げられないでしょう。

さきに生まれん者はのちを導き、後に生まれん者は前をとぶらえ。」という言葉があります。

私は有難いことにこうして仏法に出遇い、お念仏の日々を過ごさせていただいていますが、それは何も私ひとりで出遇ったものではありません。数えきれないほどのご先祖やご縁のある先輩方のおかげであります。

その方々がいのちをもって伝えてくださった「人間の生きる意味」というのが、「彼の岸」つまり「お浄土」に至るということではないでしょうか。

人生の故郷でありますお浄土には、懐かしい方々が私たちを待ってくださっています。

そんなお浄土におもいを向けるご縁がお彼岸です。

このまた会える世界をご用意してくださいましたのが阿弥陀さまです。 有難いご縁で。是非感謝のお念仏をさせていただきましょう。

南無阿弥陀仏